水盤の都

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 赤い月、白い月、青い月、藍の月を数えても、幼い王子は飽きることなく、奥庭の水盤を、妾の元を訪れ続けた。
 日差しが厳しい折には、沙羅双樹の木陰で涼み、花開いたばかりの青い睡蓮を愛でながら、ルイスワーンは他愛もないお喋りをしていく。
 王族たちが暮らすという、翡翠宮殿(エスディアル)のこと。
 父王のこと、妃たちのこと、二人の異母兄達のこと、守り役の者たち。
 親しい者たちのことを話す時、幼い少年はいつも楽しそうに、愛おしくてしょうがないといった風に語るもので、人間嫌いの妾でも、仕方なく、仕方なく、聞いてやる羽目に陥る。面倒だが、名をもらった借りもあることだから、妥協してやらなくもない。
「それで、リルファ。チャンルー兄上は、いっつも落ち着いていて、凄く賢いんだ。ヤーディナル師も、常々、誇らしく思ってる。二番目の兄上は、ナーラーイ。狩りが得意なんだけど、優しいから、獲物をすぐ逃がしちゃうんだ。狩りに行く度、父上にお叱りを受けているけど、しょうがない、って笑っている」
「ナーラーイ兄上に会いに行くと、側仕えのラフナが、いつも笑って迎えてくれるんだ。前の象使いの娘で、父親を亡くしてからずっと、兄上に仕えているんだよ」
「ああ、お前の兄の側仕えとやらなら、知っている。口の利けぬ、あの娘だろう。ラフナというのか」
 嬉しそうに、上の兄や下の兄のことを語っていたルイスワーンは、妾の言葉に、驚いたように、瑠璃の瞳を見開いた。
 その表情を、少々、小気味よく思いつつ、妾は「水鏡で見た」と教えてやる。
「リルファ、そんな事が出来るのか?翡翠宮殿とか、もっと遠くの景色も見れたりするのか、異国の風景なら、私も見たい」
 想像していた通り、ルイスワーンは、身を乗り出してくる。
「偶にならな。いつもは無理だ。精霊(ジン)の力にも、限界はある」
「出し惜しみなんて、意地が悪いぞ。リルファ」
「お前は、口が悪い。ルイスワーン」
 へそを曲げた王子様は、どうやら、水妖を恐れていないらしい。
 偶には、自らの立場を思い知らせてやろうと、戯れに腕を伸ばす。水の感触が頬を撫で、ルイスワーンは目を丸くした。
 ふふふ、と蠱惑的に嗤って、せいぜい人ならざる者のように振る舞ってやろう。
「そうだな。お前の力を食らえば、もっと、力が戻るかもしれない。水鏡の為に、我が身を犠牲にする覚悟が、おぬしにあるか?」
「食う?リルファが私を?構わないけど、美味くはないと思うぞ。試したことはないけど、舐めても、甘くないし」
「……もういい。確かに、お前はまずそうだ。ルイスワーン」
 そもそも、水盤に囚われ続けている限り、力を蓄えた所で、あまり意味はない。
 暇潰しに、外の世界を見る以外、これといった使い道はないのだから。
 青い睡蓮の咲くところ、水盤の都が繁栄を極める限り、妾は此処に囚われ続ける。
 三日と開けず、通いくるルイスワーンだったが、一時、随分と日が開いた時があった。
 妾が気まぐれに、水鏡で翡翠宮殿を映すと、其処には病床の上の兄を見舞う、幼い弟の姿があった。
 ルイスワーンの十近くも離れた、腹違いの長兄である、チャンルーという青年は、物静かで思慮深い性質のようだった。
 王の嫡子として生まれながら、滅多に寝台から起き上がれぬ身に、葛藤を抱えていなかったとは、思えぬ。
 自由に外を駆け回る、異母弟たちの姿は、眩しく、憧憬の対象であったのだろうか。
 しかし、水鏡に映る、彼の王子はいつも穏やかに、己が運命を受け入れているようだった。
 窓辺の椅子に腰かけ、難解な書物を紐解く傍ら、翡翠宮殿の庭を駆け回る子供たちに、慈しむような眼差しを注いでいた。
 月を星を愛で、窓を吹き抜ける風を感じ、鳳凰木の赤い花、その鮮やかさに目を細むる。
 側仕えや典医、大勢の者たちに、かしずかれながら、チャンルーという王子は、全てを在るがままに受け入れて、何も望もうとしていないようであった。
 それは、人ならぬ妾から見ても、あまりに達観した、否、達観しすぎた生き様に思えたものだ。
 お身体に障られます、と典医に言われては、声をあげて笑うことすら、彼の者には許されぬようだった。
 それでも、日頃、異なる宮で暮らす弟たちが見舞いに来た時だけは、その部屋に明るい笑い声が響いていた。
 ルイスワーンが遊びに来ると、チャンルーは象戯の盤を広げて、何度、挑んでも負けてしまう末の弟に、時折、わざと負けてやる。そうすると、ルイスワーンがむっと眉を顰め、もう一度と駒を並べ直す。その繰り返し。
 やがて、二番目の王子、ナーラーイが側仕えの、口が利けぬ娘と共にやって来て、兄と末の弟の勝負に首を突っ込むのであるが、決まって、相手にされず、一蹴されてしまう。
 側仕えの娘が、ふわり唇を緩めて、三人の王子達の為に、軽く摘まめる菓子を支度する。
 生母は違えど、仲の良い兄弟のようだった。
 けれども、妾は知っていた。そんな日々が、そう長くは続かぬことを。先を読む力、運命を読み解くそれは、精霊(ジン)の力の中でも、水妖のそれはひときわ強く、だが、厭わしいもののひとつだ。
 下らぬ。あの憎いハフマーンの血族に、情など沸かぬ。
 妾を解放せぬ、水盤の都など、いっそ滅びてしまえ。
 そうすれば、幾千の夜を越え、妾は檻から解き放たれる。
 あぁ、あの瑠璃(ラピスラズリ)の王子が、悪いのだ。どうして、憎んだままで、いさせてくれなかったのだと。
 名などもらうから、囚われる。水の加護を得る、その為だけに名を奪った水妖に、彼の王の末裔たる王子が名を授けるなど、過ぎたる皮肉でしかないではないか――。
 水盤の底から、仰ぎ見る水面は澄んでおり、こぽこぽと浮かぶ泡は、妾のもの。
 ゆらゆらと水底に差す光の軌跡、柘榴石(ガーネット)の蓮華、月長石(ムーンストーン)の魚、薔薇輝石の小鳥。命なき貴石の紛い物。睡蓮の緑の葉が、光の織り布を透かして、たゆたう。
 もう、あ奴、ルイスワーンは、来ぬかもしれぬと妾は思った。所詮、幼い王子の戯れ、いつ無くなってもおかしくない。
 あ奴の賢しさや騒がしさに、最早、煩わせられることもないのは、大変、喜ばしいことだ。
 それなのに、どうして、妾は水鏡に映りこんだ、翡翠宮殿(エスディアル)などを熱心に見つめているのだろう。
 
 半身たる銀月が、煌々と水盤に幻を映す夜、もう来ぬまいと思っていたルイスワーンが、再び、妾の元を訪れた。
 花を閉じ、蕾となりたる青蓮、幼い王子の訪れを迎えるように、水盤の底から見上げると、葉の黒い影がゆらめいた。
 妾は、こぽ、と泡を吐きだすと、水と同化し、ようよう底まで届いた月光の帯と戯れながら、リルファ、リルファ、と呼ぶ声には、気づかぬ振りを貫いた。水の精霊(ジン)、水妖と称される妾は、水と同化し、気配を完全に消すことが出来る。
 そうしておれば、いずれ、あの諦めの悪いルイスワーンも、待つことに飽いて、立ち去るであろう。
 妾はそう信じ、疑いもしなかった。
 しかし、それは甘い考えであったと、すぐに悟らざるを得なかった。
 波風たたぬ水盤を、しかめっ面でのぞきこんでいた幼子は、やがて意を決したように、腕ごと、小さな掌を水盤の中に突っ込んだ。上等な衣装が、黄金の、金剛石を嵌め込んだ腕輪が、水に濡れるのも厭わず。
 白い衣がひらひらと、まるで魚のヒレのように、青い水の中を泳いだ。
 のみならず、沓を脱ぎ捨てた後、水盤に顔をつけようとするルイスワーンの馬鹿さ加減に、妾は仰天した。
 ――こ奴の頭に、懲りるという言葉はないのか。
 精霊が思い煩うことではないが、守り役の心労が、偲ばれてならぬ。
 妾は、仕方なく、本当に仕方なく、水面に浮かび上がってやることにした。
 あ奴と喋りやすいよう、少女の姿を取り、心の赴くままに文句を言う。
「おぬし、また溺れる気か?水妖の棲みかに手を入れるなど、ルイスワーン、この命知らずな奴め」
 水に濡れた手を掴み、記憶にある中よりも、やや重くなった幼子の身体を、水盤の外へと押し戻す。
 束の間、触れた肌はひやりと凍えていただろう。
 妾の、水の腕に触れられたルイスワーンは、心地良くはなかったはずだ。けれども、あ奴は嬉しそうに、何の憂いもないような顔で笑った。
「――逢いたかった。リルファ」
 瑠璃が、輝く。
 名の由来たる月にも、水底の貴石にも負けぬ、神々しい程のきらめきで。
 妾を何百年もの間、鉄の鎖に繋ぎ続け、のうのうと繁栄を謳歌してきた王族、しかも、あの憎い建国王の子孫だというのに、何の打算もない笑みに、心揺さぶられるのは、何故であろうか。その瑠璃の煌めきに、この水盤に咲く睡蓮と同じ、清廉さを感じてしまうのは。
 愚かな……妾は、母なるラーナヤーナ川の眷属、生命息づく処、全てを司る水の精霊(ジン)。
 人間の、しかも、年端もいかぬ童の言動に、心、惑わされることなどあってはならぬ。
 しばらくの間、静かな眼差しで、妾を見つめていたルイスワーンは、ふと唇を尖らせ、年相応の幼さと、拗ねた風な表情を垣間見せた。リルファ。
「出てくるのが、遅いぞ。何処にもいないのではないかと、ひどく不安になった……まあ、最近、此処に来れなかった私にも、責はあるが」
 しばし顔を合わせぬうちに、少しばかり大人びた口を利くようになった、瑠璃の王子に、妾はふん、と水面をゆらがせながら、憎まれ口を叩く。
「もう来ないと、胸を撫で下ろしていたというのに、性懲りもなく……やれやれ、難儀なことだ。おぬしのせいで、妾の平穏なる時間が乱されるのだぞ。どう、責任を取ってくれるのだ?」
「つれないな。気を惹く為の、そなたの表情も、実に魅惑的だが」
「……おぬし、意味がわかっておらぬだろう?」
 妾が冷やかに返すと、ルイスワーンは、しまったと首をすくめた。
「守り役が柱の影で、側女のルシャリに一生懸命、そう言っていたんだ。どういう意味なのか、私にはわからない。リルファなら、わかるのか?」
「おぬしは、まだ知らなくて良いことよ。いずれ、紅い月の夜、ままならぬ恋に狂う時が来ればわかろう」
 幼い王子は妾を見上げ、わかったようなわからぬような顔をしていたが、やがて、小さく頭を振ると、ぽつり、「チャンルー兄上が」と吐き出した。
「チャンルー兄上のお具合が悪いから、なかなか、宮殿を抜け出せなかったんだ。元々、お身体の丈夫ではない方だけど、今度は、床離れも出来なくて……早く、一日でも早く、治りますように、って、毎日、毎日、川の女神様にお祈りしてる」
 泡のように、儚く、溶けいってしまいそうな声だった。
「ほぉ……兄弟想いで、感心なことだな。胎違いの王族など、普通は邪魔でしかないだろうに」
 少々、意地の悪い妾の言動にも、ルイスワーンは俯いて、力なく首を振る。
「そんなんじゃない。チャンルー兄上は、お忙しい父上に代わって、私を育ててくださった御方だ。乳母チャシャや、守り役も勿論だけど、兄上たちが居て下さらなくては駄目なんだ」
 穏やかで、思慮深い第一王子チャンルー。
 明るく、武芸に長けた第二王子ナーラーイ。口の利けぬ側女、ラフナ。
 ルイスワーンが水盤の傍らに腰をおろしては、「兄上が兄上が」とくどいほど語るので、妾も、すっかり覚えてしまった。
 第一王子の離宮に、幼い末王子の笑い声が響いて、上の王子は目を細め、真ん中の王子は側仕えの娘と、何事か親しげな囁きを交わしている。
 鮮やかな鳳凰木が、風に真紅の花弁を揺らして、何処からか、己の片割れ、番を求める鳥の鳴き声が聴こえてくる。
 ルイスワーンが幾度も幾度も語るおかげで、見ずとも、瞼の裏に浮かぶようなった、その光景。
 翡翠宮殿の奥庭、その息遣いを感じる処にいながら、水盤に囚われた妾には、あまりにも遠い。
「……リルファ?どうしたんだ?」
 黙り込んだ妾を気遣うように、ルイスワーンが膝をつく。白い衣が水盤に浸かり、かすかな水音を奏でた。
 精霊と心を通わす者である、こ奴は、いつも迷うことなく、妾を見つめてくる。人と同じように、笑い、泣き、怒りをぶつけてくる。それが、自然なことであるように。
 やはり、こ奴は馬鹿者だ。妾は水の精霊(ジン)ぞ。水妖ぞ。おぬしは、妾をこの水盤に縛り付けた、憎い王の末裔だ。
 過ぎたる戯れは、いずれ、皆等しく終わりにせねばならぬ。
「ルイスワーン」
「何だ?」
「おぬし、もう此処に足を踏み入れるな。ここは、精霊の棲む禁域ぞ。いくら、王子といえども、人が来るべき処ではない」
 妾の言葉を、ルイスワーンは目を見開いて、信じられないといった面持ちで聞く。
 一年以上も奥庭に通い続けて、急に拒まれるとは、思っていなかったのだろう。
 瑠璃の瞳には、困惑の色が濃かった。
 どうして……、と喉を震わすあ奴を、妾は嗤う。人の子は、儘ならぬことに対して、何故、と理由を求めたがる生き物だ。
 妾は、水を形作ると、日に焼けた王子の頬に掌を寄せる。水の冷たさに、ルイスワーンが貌を顰めた。欠けた月が煌々と。
 貴種の身であるはずの幼子が、獣の子のような野生で、妾を見据えてくる。
「一つ、そなたの為に先見をしてやろう。ルイスワーン」
 瑠璃の瞳の奥に、刹那、焔じみた激しさを纏う。
 細い月を象った金の耳飾りが、シャラン、と澄んだ音を奏でる。 
「おぬしは、この水盤の都の王となる。一番上の兄王子は病に斃れ、二番目の王子は謀(はかりごと)で命を散らす……大切なものを失う代わりに、おぬしは王位に就くのだ。白い月の王子よ」
 妾がそう告げると、ルイスワーンは息を呑んで、小さな体躯をふるわせた。
 頬を紅潮させて、怒りに満ちた眼差しで、妾を睨んでくる。
 そうして、激昂のままに叫んだ。
「なんてことを……何てことを言うんだ!いくらリルファでも、兄上たちを侮辱するなんて、許せないぞ!」
「勘違いするな。妾は、お前の兄弟なぞに興味はない。唯、将来(さき)が視えたから、告げただけのこと。信じる、信じぬは、おぬし次第だ」
「ぅ……つ」
 突き放すような妾の物言いが、ことのほか癇に障ったのだろう。
 しゃくりあげかけたルイスワーンが、真っ赤な顔で声を張り上げた。
「五月蠅い!お前の言うことなんか、信じないぞ、リルファ!兄上達は、儚くなったりしないし、私は王にならないからな!」
 そう怒鳴ると、幼い王子は荒々しい足取りで、裾裳を泥だらけにしながら、己が宮に戻るべく、水盤に背を向けた。
 白い背中が、沙羅双樹の暗がりに消えゆくのを、妾は黙して見送る。
 あ奴は、もう来ぬだろうと思いながら、妾はゆるりと水底へと沈んだ。

 花が散り、七つの月が巡る頃、ルイスワーンは藍の衣をまといて、水盤を訪れた。
 満つる月、花の香に酔う、ひかり眩しいような夜のこと。
 闇をとろかしたような藍は、王族が喪に服す色。
 少年が手にした、鳳凰木の花は、死者に手向けるためのものだ。
 泣き腫らした後なのか、幼い王子の目は、妾が驚くほど静かで、凪いだものだった。
「お前の先見が、当たったよ。これが、水妖の力なのか」
 言葉は少なかったが、何があったか察するには、それで十分すぎるほどだった。
 返事の代わりに、妾は水盤をかすかに波立たせる。
 喋らずとも、それだけで事足りた。
 小さく、くぐもったような嗚咽をもらすと、ルイスワーンは水盤に枝を沈めた。
 ゆらりゆらりと、真紅の花が水面を彷徨う。彼の王子の人柄には強すぎる、されど、亡き人が愛した花だった。
 記憶の中にあるよりも、幼さを削ぎ落したような表情で、ルイスワーンは「……もう泣かない」と言う。
 水盤に落ちた一滴は、気づかぬふりをしてやった。
 これが、運命だというならば、あ奴は絞り出すような声で言う。
 やつれた頬で、落ちくぼんだ瞼で、地面に爪を立てながら。くるしい。狂おしい。
 それでもなお、その輝石の瞳に、揺らがぬ意志をたたえて。
「私は、お前の先見を信じない。リルファ。たとえ此処が、お前の力で支えられた、水盤の都であっても……ナーラーイ兄上は、謀で命を落とされたりしない。絶対に、私が守り抜いてみせる」
 それは、約束ですらない。精霊(ジン)と人との誓約、そして、人ならざる者へと、生涯をかけた賭けでもあった。
「おぬしに、出来るものか。妾は、この水盤の都そのものぞ。その先見に抗うと……ルイスワーンよ?」
 哀しいことだ。
 いくら、精霊と心を通わす者であっても、唯の人間の王子と、水妖たる妾では、端から賭けにならぬ。
 けれども、頷くルイスワーンに迷いはない。
「賭けをしよう。リルファ。私は、必ずや、ナーラーイ兄上を守り抜いてみせる。負けたら、私の魂(いのち)をやる。その代わり、勝ったら、お前を此処から解放しよう。――この水盤の檻から」
 妾は、嗤った。
「身の程しらずな奴め。第一、それでは、賭けにならぬ」
 この水盤から、解放するだと?馬鹿馬鹿しい。
 水妖がいなくなれば、約束された永久の繁栄は、たちまち消え失せるというのに。
 翡翠宮殿の水も枯れ果て、こ奴の親兄弟は言うに及ばず、名もなき無辜の民の多くが絶望することとなろう。
 おぬしに、そんな真似は出来ぬであろう。ルイスワーン。
 先見は、違わぬ。
「二番目の王子は、謀で命を落す。故に、おぬしは王となるのだ。ルイスワーン、水盤の王の末裔(すえ)」

 水鏡に映った運命を変えることなど、人の身には叶わぬことだ。
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